研究概要 |
タンパク質、mRNAの量が時間によって変化しない定常状態でのタンパク質ターンオーバーの測定を可能にするため、ロイシンと炭素源の濃度を変えて連続培養の条件検討を行い、ロイシンを制限基質とした連続培養の系を確立した。非ラベルロイシン(Leu-NL)をフィードした培養からロイシン-5,5,5-d3(Leu-d3)に置き換えて培養を継続し、同位体の変化により定常状態が崩れていないことをDNAマイクロアレイによりmRNAレベルで確認した。確立した培養系を用い、フォード切り替え後にどれだけのタンパク質が置き換わったか(ターンオーバー)を調べるため、nanoLC-MS/MSによる網羅的なペプチドの解析を行い、Leu-NLとLeu-D3を含むペプチドの比を測定した。タンパク質毎に集計した結果、300-500種類程度のタンパク質のターンオーバーが測定可能であった。ほとんどのタンパク質は非常に安定で、数時間ではほとんど分解が見られなかったものの、半減期20-120分の早いターンオーバーを示すタンパク質も約50種類発見した。早い分解を受けることが既知のタンパク質も数種類含まれていたが、残りのほとんどは新たな発見である。一培養条件における実験だけで多数が発見されたので、今後条件の変更によってさらに多くを発見できると期待され、タンパク質ターンオーバーの機構と細胞内の役割について新しい知見が得られると考えている。 次世代シーケンサーによって原核生物mRNAの絶対量を網羅的に測定するためのmRNA精製法の検討を行い、得られたmRNA量とemPAI法で得たタンパク質量の比較を行った。この結果より早いターンオーバーを示したタンパク質のうち、一部ではタンパク質/mRNAの比が非常に低いことも明らかになった。
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