研究課題
これまでにテフロン、ナイロン、ポリビニリデンジフルオリド膜など24種類の膜フィルターについて、電気泳動ゲルからのタンパク質を固定化できるか、固定化されたタンパク質を(膜フィルター上でプロテアーゼ消化した後)質量分析装置で効率的に同定できるかどうか調べた。その結果、新規なPVDF-MS膜(仮称)がプロッティングと質量分析装置の両方に使用できることを見いだした。この膜の有用性を検討するため、二次元電気泳動で高分子量および低分子量タンパク質、高等電点および低等電点タンパク質、高濃度タンパク質および低濃度タンパク質など性質の異なる多数のタンパク質を分離し、PVDF-MS膜に転写した。そして、各タンパク質を膜上でトリプシン消化した後、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析装置(MALDI-TOF MS)を用いたペプチドマスフィンガープリンティング法によって分析した。その結果、すべてのタンパク質を効率的に同定できることがわかった。本年度は、過ヨウ素酸-シッフ塩基反応(PAS:Periodic-Acid Shiff)染色法によりPVDF-MS膜上で検出された糖鎖修飾タンパク質がMALDI-TOF MSにより同定できるかどうか調べた。まず、糖鎖修飾タンパク質であるトランスフェリンと糖鎖修飾を受けていないウシ血清アルブミンを電気泳動分離後、エレクトロブロッティングによりPVDF-MS膜に転写した。PAS染色法を用いて検出されたバンドを膜フィルター上でトリプシン消化し、MALDI-TOF MSを用いたペプチドマスフィンガープリンティング法により分析した結果、糖鎖修飾タンパク質であるトランスフェリンのみを同定することができた。PVDF-MS膜を用いて糖鎖修飾タンパク質を簡便に分析できると考えられた。
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