本研究は物質生産および変換のための包括的な解析基盤を構築するため、本年度は以下の2つの課題に分け検討した。 1.ゲノム情報を基盤とした染色体再構成による主要2次代謝産物生合成遺伝子群が欠失した大規模欠失株の構築。2.溶原化ファージの組み込み機構を利用した染色体組込み型ベクターの開発。初年度から行ってきた大規模染色体欠失は昨年度までで、ほぼ当初の目的を達成することができており、ストレプトマイシンおよびセファマイシンCの生合成遺伝子群を導入することによってそれぞれの代謝物の生産を確認することができた。本年度はポリケチド化合物生合成遺伝子群の発現を検証するため、新規な作用機構を有する12員環マクロライド・プラジエノライドの生合成遺伝子群に関しての発現を検討した。昨年度末に80-kbのプラジエノライド生合成遺伝子群を染色体大規模欠失株に導入したがその生産が認められず、生合成遺伝子群を調節する制御遺伝子の発現が見られないことが明らかとなったため、これまで本研究課題で得た各種のプロモーターを使って制御遺伝子pldRの人為的な強制発現を行った。数種のプロモーターによってpldRの発現が認められるとともにプラジエノライドの生成を確認した。使用したプロモーターのうち、ermEpおよびaveRpでプラジエノライドの生産が良好であった。また、これらのプロモーターよりも強力なrpsJpではそれ程期待できる生産量が認められなかった。これらのことからpldRの発現は生育時期などいくつかの要因が重要であることが明らかとなった。
|