ノックインマウスはマウス個体レベルで蛋白質の機能を解析するために極めて有用な手法である。また、胚性幹(ES)細胞は様々な細胞にIn vitroで分化させることができることから、マウスを作製するために用いられるだけでなくノックインES細胞自身も有用なバイオリソースとして様々な研究に使用することが可能である。大腸菌内での相同組み換え反応により自由にDNAが改変できるRed/ET組み換えの手法を用いることで蛋白質のC末端部分にタグを付加する形のノックイン作製用のベクターを包括的に迅速に作製するシステムを構築した。蛋白質の検出用や様々な用途の実験のために色々なタグが現在広く使用されているが、ノックインES細胞を多目的に使用するためには、ノックインES細胞を作製した後にノックイン用のタグを自由に変えることの出来るシステムを開発することが必要である。このために従来は特定の場所にcDNA等の発現ユニットを挿入する方法として開発されたRMCE(Recombinase-Mediated Cassette Exchange)法をノックインES細胞のタグの入れ換えの手法として用い、ノックインを行なう目的の蛋白質のC末端部分に交換可能なタグを導入するシステムを構築した。FRTサイトと変異型FRTサイトの組み合わせとloxPサイトと変異loxPサイトの組み合わせを比較した結果、タグの交換効率が最適なシステムを構築することができた。Lin28はlet-7前駆体が成熟miRNAにプロセシングされることを妨げる負の制御因子として働くRNA結合蛋白質であるが、Lin28遺伝子を例に上記のRMCEのシステムを用いてCre酵素依存的にEGFPからDsRedタグに入れ換えることにより、一度作製したノックインES細胞のタグを正しいフレームで入れ換えることが可能であることを示すことができた。
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