ノックインマウスはマウス個体レベルで蛋白質の機能を解析するために極めて有用な手法である。大腸菌内での相同組み換え反応により自由にDNAが改変できるRed/ET組み換えの手法を用いることで蛋白質のC末端部分にタグを付加する形のノックイン作製用のベクターを包括的に迅速に作製するシステムを構築した。蛋白質の検出用や様々な用途の実験のために色々なタグが現在広く使用されているが、ノックインES細胞を多目的に使用するためには、ノックインES細胞を作製した後にノックイン用のタグを自由に変えることの出来るシステムを開発することが必要である。このために従来は特定の場所にcDNA等の発現ユニットを挿入する方法として開発されたRMCE (Recombinase-Mediated Cassette Exchange)法をノックインES細胞のタグの入れ換えの手法として用い、ノックインを行なう目的の蛋白質のC末端部分に交換可能なタグを導入するシステムを構築した。ES細胞のゲノムをより複雑で緻密に改変することができるようにCre/loxPやFlp/FRTと認識サイトが異なり、これらのシステムと併用できる新しい2種類の部位特異的組み換え酵素システムを開発し、VCre/VloxPとSCre/SloxPと名付けた。これらの新規組み換え酵素は、Cre蛋白質と30%程度の低い相同性しか示さず、部位特異的な認識サイトも異なる。各認識サイトを含むプラスミドを導入し組み換え反応を起こさせたところ、Cre/loxP系とほぼ同じ効率で組み換え反応を起こすことができた。これらの組み換え酵素と認識サイトは特異性が極めて高く、相互にクロス反応は起こさないことが明らかになった。また、マウスES細胞でもVCre蛋白質発現依存的にVloxPで挟んだエクソンを欠損させることができた。
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