研究概要 |
本研究は、近縁ゲノム間で主に垂直伝搬され、保存された構造としての「コア構造」を定義することを目標として、ゲノム間で遺伝子の並び順が保存された構造を抽出する方法を開発し、大量に蓄積しつつある微生物ゲノムの整理を行うとともに、ゲノム進化過程や進化機構の推定を試みる。今年度は、本研究の基礎となるコア構造抽出アルゴリズムを作成し、CoreAlignerプログラムとして公表した。これは、対象とするゲノム間のオーソロググループを入力として、保存された並び順に沿ってオーソロググループを並べ直すことにより、共通の保存構造を抽出するものである。このプログラムを用いて、バチルス科と腸内細菌科のゲノムを用いてコア構造を抽出し、特徴付けを行った。その結果、バチルス科では枯草菌遺伝子の1/3,腸内細菌科では大腸菌遺伝子の1/2がコア遺伝子であり、それらは必須遺伝子をはじめとした機能的に重要な遺伝子の大半を含んでいた。また、GC含量の均一性や系統樹のトポロジーの点から水平移動の可能性を調べたところ、一部のコア遺伝子では水平移動が推定されたものの、全体的にコアは非コアと比べてより多くの遺伝子が垂直伝搬遺伝子の特徴を持っており、目標にかなうものであることが示された。さらに、従来行われていた、単に遺伝子の保存性のみによってコア遺伝子を定義する方法と比べると、本手法によるコア遺伝子集合は、ゲノム数の変化に対してより頑健であることが示された。これらの解析を、より広範なゲノム配列に適用するため、微生物ゲノムデータベースMBGDと連動して近縁微生物ゲノムのデータを系統的に収集し、CoreAligner解析を行うシステムを構築した。6種以上を含む科として抽出された22科について解析したところ、コア遺伝子数にばらつきがあったものの、多くの場合にこれまでに得られた結果と類似の結果が得られた。今後、さらにこれらの結果の一般化を試みる。
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