研究課題
抗腫瘍性物質サフラマイシン生合成で最も重要な骨格合成酵素SfmCに標的を絞り、その酵素活性の検出を試みた。長鎖アシル基を有するジペアチドCoA誘導体およびチロシン誘導体を基質として、ATPおよびNADPHを補酵素として添加する条件下反応を行ったところ、望む5環性環化生成物が得られた。その詳細な反応機構を解析した結果、本酵素SfmCは、3回の還元反応、2回の炭素炭素結合反応(Pictet-Spengler反応)を含む7段階の反応を触媒する興味深い酵素であることがわかった。さらにアシル基部分の鎖長が、反応速度に劇的な影響を与えることも明らかにした。本変換反応で最も興味深いPictet-Spengler反応を触媒するドメインを特定するため、調製した複数の変異酵素を用いて、単一触媒回転実験を行ったところ、本来ペプチド結合形成を触媒するCドメインが、還元(R)ドメインによって生じたアルデヒドとアミノ酸(チロシン誘導体)の間でイミン形成後、生じたイミンとフェノールの隣接炭素の間で結合形成を触媒することを明らかにした。本研究では、ペプチド合成酵素(NRPS)の新規機能を発見したのみならず、サフラマイシンと同一の骨格を有する臨床用抗ガン剤の酵素合成に適用可能な重要な変換反応を見出した。
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