研究課題
既に我々は、抗腫瘍性物質サフラマイシン生合成で最も重要な骨格合成酵素SfmCの詳細な反応機構を提出したが、その機構の詳細を明らかにすべく確認実験を行った。まずアシル基の鎖長をC2からCl6まで変えたジペプチドCoA誘導体およびチロシン誘導体を基質として反応を行ったところ、Cl4以上の鎖長有する場合のみ望む5環性環化生成物を与えた。次いで重水素標識したNADPHを用いて還元に使用される水素を調べたところ、4S側水素が特異的に利用されることがわかった。さらに補酵素をNADHおよびNADPHをとして濃度を変化させて行ったところ、望む環化生成物は低濃度ではNADPH、高濃度ではNADHを用いた場合良好な結果が得られた。これにより比較的大量の生成物を得て、その解析から構造を確定することができた。CoA誘導体からアルデヒドへと基質を替えた場合、鎖長依存性が低下し、収量も大きく向上することが判った。こうした知見は、関連化合物であるシアノサイクリン、キノカルシンおよび抗腫瘍抗生物質エキチナサイジンの酵素反応にも適用可能と考えられる。さらにSfmCの真の活性種を特定するため、酵素を変成させない条件で電気泳動を行い複合体形成能を調べたところ、この種のペプチド合成酵素としては稀な二量体を形成していることがわかった。本研究全体を通し、ペプチド合成酵素(NRPS)におけるペプチド鎖の切り出しを行う還元ドメインおよび縮合ドメインに関する新規機能を見出した。
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