研究課題
昨年行った合成ルートを参考にして、光学活性かつ均一の炭素鎖を有するトリアシルグリセロールの合成を行った。ジアシルグリセロールの場合と同様に、1,2-Di-O-iropropylidene-sn-glycerolを絶対配置が確定した出発物質として使用し、1位のフリーアルコールを保護した後、リノール酸をエステル結合で2ヶ導入、その後、アルコールを脱保護し、オレイン酸を結合させた。また、鏡像体の合成も同一のスキームにそって行った。実施した反応条件では、ラセミ化反応は全く起こらないと考えられ、これにより、光学的に純粋なトリアシルグリセロールを得ることができた。次に合成されたトリアシルゴリセロール及びトリアシルグリセロールを主成分とする市販植物油脂のVCD測定を行った。重水素クロロホルムを溶媒として、カルボニルの吸収を目安に測定を行ったが、カルボニル吸収付近のVCDシグナルに再現性が見られなかった。この結果は、合成品および市販植物油脂で同様な傾向であった。VCDシグナルに再現性が見られないことから、他のトリアシルグリセロールの合成を見合わせ、再現性が得られない原因を究明することとした。種々VCD測定条件を検討した結果、ニートの状態で、測定セルを回転させるとカルボニルVCDシグナルの強度が劇的に変化することを発見した。このシグナル強度の変化は、セルの回転角度に依存しており、このことから、合成トリアシルグリセロールが自由な運動をしておらず、一種の液晶状態に近い状態にあると結論づけた。当初予定していたトリアシルグリセロールのVCDによる単純なプロファイリングは、困難であることが判明したが、トリアシルグリセロールの液晶状態をVCDにより観察することができた。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (13件) 図書 (1件)
Tetrahedron Lett.
巻: 52 ページ: 1851-1853
J.Nat.Prod.
巻: 74 ページ: 707-711
Eur.J.Org.Chem.
巻: 33 ページ: 6372-6384
巻: 33 ページ: 6385-6392