本研究では、東北大学大学院工学研究科、マックスプランク研究所との共同研究により、植物運動細胞がジャスモン酸配糖体LCFに対して立体化学特異的な応答を示し、細胞体積収縮を誘導することを明らかにした。アメリカネムノキ葉枕より調整したプロトプラストのうち、葉の上面側にあたるextensor運動細胞のみが、(+)-LCFにより立体化学特異的に収縮した。この細胞レベルでの応答に加え、アメリカネムノキ個体レベルでの応答(就眠運動の誘導、volatile生成)、遺伝子レベルでの応答(ジャスモン酸特異的応答遺伝子)、なども詳しく解析した結果、この応答機構は、ジャスモン酸の受容体であるCOI1タンパク質が関与しない全く新規なものであった。 分子プローブを用いた研究から発見されたMTJGは、運動細胞膜上に存在し、(+)-LCFを立体化学特異的に認識することから、その推定膜受容体と考えられる。これを精製するために、剛直なリンカー構造をもつ高性能BArL(Biaryl-linked)型分子プローブを開発した。 一方、ジャスモン酸ミミックであるコロナチンは、LCFとは逆に気孔孔辺細胞を膨潤させる。この作用機構解明のため、clickchemistryにより、多様なプローブに誘導可能なアジ化コロナチンを開発し、coi1突然変異株を用いた生物検定とプロテインノックダウン法を組み合わせた作用機構研究を試みた。
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