研究概要 |
電位依存性Naチャネル(NaCh)は、神経細胞における活動電位の調節を担う膜タンパクであり、電位依存型とアミロライド依存型に大別される。近年、電位依存型NaChには9つのサブタイプが存在し、その存在比は細胞種によって異なることが明らかとなった。これらは各々が、痛覚、心拍、筋肉伸縮等の重要な生命活動と密接に関係していることがわかっているが、それぞれの電流成分を区別するための特異的阻害剤が存在しない。このため各サブタイプの機能は未だ解明されていない。本研究では電位依存型NaChのリガンドの1つであるサキシトキシン(STX)に着目し、化学的に合成したSTX類縁化合物をNaChサブタイプ選択的なリガンドとして開発するための研究基盤構築を目標とする。当該目標に対し平成20年度は、STX類の全合成研究過程に見いだされたSTXと異なるビシクロ縮環骨格を有する新規STX類縁化合物MD-STX類に着目し、MD-STX類のC12に関する構造活性相関研究を行なった。具体的には、環状ニトロンとオレフィンとの1,3-双極子環化反応(1,3-DC)で立体選択的に得られるイソキサゾリジンを用いて、N-O結合の還元、アミンに対するグアニジノ基を導入しビスグアニジンを得、ついでIBXを用いたαアミノケトンの酸化反応とビシクロ骨格構築を同時に行なうことで、C12位に関する3種のMD-STX類を合成した(1a(Me),1b(CH_2OH),1c(CH_2OCONH_2))。得られた1に対し、Na_v1.2を主に発現している神経芽細胞腫Neuro-2Aを用いてNaCh阻害活性評価を行った。その結果、1cがIC_<50>=7.3±2.7μMでNaChを阻害することが分かった。今後同評価系を用い、Neuro-2A変異株を用いて阻害活性評価を行い、サブタイプ選択性に関する構造活性相関研究を展開していく。
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