研究概要 |
本研究では,難治性の神経因性疼痛の症状の一つであるアロディニアの誘発に関わる新規受容体を同定するための分子プローブの創製をめざした.生体における標的受容体の発現部位を陽電子放射断層画像撮影法(PET)により探索することとし,受容体リガンドのPETトレーサー化について検討した.まず,天然キノコ毒で,新規受容体を介してアロディニア誘発作用を示すと考えられるアクロメリン酸の構造を基に,独自に設計・合成したアンタゴニスト活性を持つ化合物PSPA-4のPETトレーサー化を試みた.トレーサーに組み込むポジトロン放射核として半減期20分の^<11>C核を選択し,高速メチル化反応により分子内のベンゼン環に標識することにした.^<11>Cの半減期が短いため,標識反応から分離・精製までの行程を30分以内で行う必要があるが,PSPA-4の構造上,メチル化段階では官能基の保護が不可欠であると判断した.そこで,メチル化反応を5分,脱保護1分に設定し,両プロセスををワンポットで行う経路を設計した.前駆体となるスズ化合物は,対応するハロゲン体から効率的に合成することに成功した.コールドの条件で,メチル化-脱保護反応を検討した結果,アミノ基の保護基にトリフルオロアセチル基を用い,メチル化後,アルカリ水溶液を加えてエステル部位とともに一気に脱保護することで前記要件を要件を満たすルートを確立することができた.次に,実際のPET合成装置によりトレーサー合成を検討し,良好な放射化学収率で^<11>C-PSPA-4プローブを合成することに成功した.予備的ではあるが,ラットにおけるイメージング実験を行い,脳組織への特異的集積を観測することに成功した.
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