研究概要 |
本研究では、人為的な酵素機能の制御と分子多様性創出の格好の材料ともいえる、高等植物由来III型ポリケタイド合成酵素(PKS)をとりあげる。有機化学を基盤として、分子生物学や構造生物学、タンパク工学の技術などを駆使することにより、新たな酵素触媒機能の開拓と有用物質生産系の構築をめざした。本年度は、イネ由来クルクミノイド合成酵素のX線結晶構造解析に成功し、新たな酵素反応機構を提唱、印刷公表した。昨年度に引き続き、アロエ由来ペンタケタイドクロモン合成酵素、オクタケタイド合成酵素、また、ダイオウ由来ベンザルアセトン合成酵素、トウゲシバ由来カルコン合成酵素などを材料として、結晶構造に基づき、活性部位キャビティの大きさや活性アミノ酸残基の配置を変化させることにより、合理的な酵素機能改変により、各種機能改変酵素の作成に成功した。一方で、化学合成したアミノアシルCoA、カルバモイル基含有芳香族CoAチオエステルなど、非天然型基質を酵素に作用させることにより、生物活性を有する数種の、非天然型新規テトラミン酸誘導体、また、イソピリドインドール、ベンゾアゼピン骨格を有する非天然型新規アルカロイドの創出に成功した。さらに、これら非天然型基質を、上述した非天然型機能改変酵素と組合わせることにより、さらなる新規生物活性化合物の生産に成功した。これら研究成果を、PNAS2報,JACS1報を含む、5報の論文として印刷公表した。
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