研究課題
細胞毒性オキサスクアレノイドの連続的カスケード型環化反応によるバイオミメティック合成に先立ち、構造が未解明の新規オキサスクアレノイドオマエザキアノールの構造決定を行った。1994年神奈川県の江ノ島で採取した紅藻Laurencia omaezakiana Masudaから新規トリテルペンポリエーテルオマエザキアノール(1)を単離した。1は最終的に各種2次元を含む1^H and^<13>C NMR等の詳細な解析からテトラヒドロフラン(THF)環が4つ連結した平面構造を有することが判明したが、立体化学についてはずっと不明のままであった。一方1995年Jacobsらはジャマイカ産のみかん科植物Spathelia glabrescensから単離されたTHF環が5つ連結したグラブレスコール(2)の構造を報告した。その後、我々を含む3つのグループが提出構造式2の合成を行い、グラブレスコールの提出構造は間違っていることを指摘し、最終的に我々とCoreyらのグループが独立に正しい構造式を全合成することに成功しグラブレスコールの構造を改訂した。我々のグループは1の構造決定の際に天然物の誘導化実験を行っており、THF環が5つ連結した非対称な化合物と対称な化合物を得ていた。最近になって対称な化合物のNMRスペクトルが我々が以前合成していたグラブレスコールの間違ったmeso体の構造式のスペクトルと一致することが判明し、15年近く不明であったオマエザキアノール(1)の相対配置が判明した。さらにオマエザキアノールの光学活性体を全合成することに成功し、絶対配置を含めた全立体化学を決定した。このように分光学的手法では解決できない立体構造決定の問題を合成化学的手法により解決した。これらの研究はオキサスクアレノイドの生合成解明において基盤をなすものであり、この研究分野の発展に大きく貢献するものと思われる。ハウアミンの合成では、問題のC26位の不斉4級炭素を立体選択的に構築することに成功した。
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