研究課題
本年度の交付申請書に記載した研究目的、研究実施計画に従い研究を行った結果、以下のような成果が得られた。細胞毒性オキサスクアレノイドの連続的カスケード型環化反応によるバイオミメティック合成については、昨年度確立したカスケード型オキサ環化の反応条件(THF/H_2O=9:1中触媒量のトリフルオロメタンスルホン酸)をEkebergia capensisの樹皮より単離されたエケベリンD_4に適用し、立体選択的に合成した仮想生合成前駆体スクアレンテトラエポキシドから低収率ではあるが一段階で化学合成することに成功した。エポキシドの加水分解を引き金とした生合成様連続的オキサ環化が化学反応として実験的に再現できることを示したものであり、興味深い化学的知見であると思われる。強力な細胞毒性を有するイソデヒドロチルシフェロールの全立体構造決定の問題は、昨年度立体選択的合成法を確立した左右両フラグメントを用いて鈴木-宮浦クロスカップリングにより収束的に連結し、イソデヒドロチルシフェロールの可能な二つのジアステレオマーへと導くことに成功した。現在合成品の立体構造について検討を行っている。この全立体構造決定の問題は分光学的手法では解決することが極めて難しく、合成化学的手法によってしか解明することができないと考えられるため、化学合成法が確立できたことは問題解決にあたり極めて意義深いものと思われる。ハウアミンの合成については、昨年度開発したハウアミンBのインデノテトラヒドロピリジン骨格の効率的合成法において、C1位の不斉炭素の導入を、4-メトキシピリジンから誘導される不斉補助基を用いたアシルピリジニウム塩へのジアステレオ選択的求核付加反応により行うことに成功し、不斉合成が可能な方法へと進展させた。
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