研究概要 |
化学反応の遷移状態を模倣した安定な化合物「遷移状態アナログ」をハプテンとして免疫すると,天然酵素と同様な触媒活性をもつ抗体が得られる.本研究では,これまで我々が行ってきた抗体酵素に関する研究を発展させ,試験管内進化による抗体酵素の高機能化を行う。また,進化型ハプテンの免疫より得られたポロ酵素型抗体酵素の新しい機能を開拓する。 I)抗体酵素の試験管内進化 最近,酸化反応を触媒するルシフェラーゼ様抗体酵素の作製に,世界で初めて成功した。そこで,本抗体(7D10)の酵母表層提示ライブラリーを構築し,高機能化を計る。 I-a)抗体7D10単鎖Fv組み換え体の作製 抗体酵素7D10の単鎖Fv抗体(scFv)を作製を検討した。pETscFvベクターをタンパク質合成用ホスト大腸菌に形質転換後,Histagカラムで精製し,組み換えscFv抗体を得た(約80μg)。 I-b)抗体7D10単鎖Fv組み換え体の機能解析 得られた単鎖Fv(scFv)抗体の結合活性を表面プラズモン共鳴スペクトル法(Biacore)により評価した。組み換え体は本来の抗体と同等の結合活性(K_d=1.84x10^<-9>M)をもつことが判明した。 II.ホロ酵素型抗体酵素の新機能開拓 最近,従来の遷移状態アナログとは全く異なる進化型ハプテンを設計し「ホロ酵素型抗体酵素」の作製に成功した。ホロ酵素型抗体酵素は,活性部位に低分子有機化合物の人工補酵素をもつ。 II-a)アシル転移反応の速度論的解析 人工補酵素としてフェネチルアルコール,フェネチルアミン,フェネチルチオール誘導体を用い,4-ニトロフェニルエステルとのアシル転移反応を行った。フェネチルアミンの場合,無触媒反応に比べ約50,000倍の反応加速を示し,高活性化に成功した。
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