昨年度に引き続き、筋強直性ジストロフィーの発症に関連すると思われる選択的スプライシング因子、CUG-BP1蛋白質のRNA結合ドメインについて高次構造解析の結果をまとめ、公表した(論文(3))。また、同様に、筋強直性ジストロフィーの発症に関与すると考えられるMBNL2蛋白質についてそのRNA結合ドメインの構造を解析し、公表した(論文(6))。これによると、MBNL2は4個あるRNA結合ドメインのうち、1-2と3-4がそれぞれひとつのドメインのように振る舞い、従来知られている様式とは異なる方法でRNAを結合することが明らかになった。基本因子については、質量分析計を用いた解析から、基本因子となるU1snRNPが、Hela細胞中では、U1-70KとSmBにおけるスプライシングバリアントのために、4種類存在していることが明らかになった。とくに、U1-70Kのバリアントについては、U1snRNP中で、構成要素のひとつであるU1C蛋白質との相互作用様式に変化が見られることが明らかになった(論文(1))。また、前頭側頭型痴呆症などに関連するTra2β蛋白質のRNA結合ドメインとその結合配列との複合体解析をおこなった。 Tra2β蛋白質は、人だけでなくショウジョウバエなどの真核生物にも見られる普遍的なスプライシング制御因子であるが、アミノ酸の類似が高いにも関わらず、異なった結合配列が報告されている。今回、異なった二種類の配列の対するNMR解析から、結合するRNA配列の構造の違いから、認識配列が変化することを明らかにした。この結果は、ひとつの蛋白質が、状況によって異なる配列を認識する可能性を示す興味ぶかいものである。
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