研究課題/領域番号 |
20310152
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研究機関 | 兵庫大学 |
研究代表者 |
金子 哲 兵庫大学, 経済情報学部, 准教授 (80330497)
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研究分担者 |
牧田 満知子 兵庫大学, 生涯福祉学部, 教授 (80331784)
岡本 洋之 兵庫大学, 経済情報学部, 准教授 (50351846)
湯瀬 晶文 兵庫大学, 健康科学部, 講師 (70301661)
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キーワード | 往生共同体 / 経済のグローバル化 / 惣 / 貨幣 / 死穢 / ネット社会 / 所有 |
研究概要 |
東アジア的文化比較の中で、その死生観の共通性と各国の独自性を考察した。特に、日本が如何なる過程において死生観の独自性を構築し、変化したかを考察し、今後の変化の方向性を検討した。2011年10月には大韓民国安東市において、東北アジア文化学会第23次国際学術大会の特別シンポジウム「東アジアにおける死生学」を開催し、中国・韓国・モンゴル・ベトナムの研究者と討論を行い、大きな成果を得た。東アジア社会の中で、日本は「強い所有志向」を有する点で極めて独自である。平氏政権期から宋・元の広域東アジア経済圏に取り込まれ、交換手段としての中国銭が流入した。平安後期には「往生共同体」を形成するに至った日本では、銭を媒介とする交換経済が主となると、契約社会へと変化し、現代社会のプロトタイプとなる「惣」が成立し一揆が結ばれた。百姓層の所有権が確立し、平民層が強い所有志向を有するに至る。これは東アジア世界では希有な事例である。所有の保証は血縁ではなく、地縁等の契約共同体が担うこととなった。このような社会では、死においても血族共同体が関与するのみならず、契約共同体が強く関与する。このことは、一方で「死穢」等のタブーの強化・拡散をもたらし、現在の日本の若年層もこの影響を強く受けている。近年の経済のグローバル化は、日本社会を支えてきた「非血縁的共同体」を急速に解体させている。強い定住志向を有し、それを前提として強い所有志向をもつ社会構造の解体は免れ得ない。血縁結合がもとより薄弱である日本社会においては、「生」「死」の不安は他の東アジア諸国より大きくなるであろう。近年、「看取り共同体」が各地で結成されている。これは、平安後期日本における活動に重なる。日本社会の本質に合致した解決法と言えよう。緩やかで不確かなネット社会に対応した緩やかでしなやかな「看取り共同体」などに、未来の可能性を見いだしたい。
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