本年度においては、研究成果の取り纏めと、海外からの招聘報告・講演を主として行ってきた。 フェミニスト経済学は、欧米学会においては既に、ケインズ学派、ポスト・ケインズ学派、新・旧制度学派を含める、新古典派経済学批判の学問潮流として広く認知されている。しかしながら、日本においては、未だその研究方法や成果の共有がなされていない。従って、第一には、フェミニスト経済学の方法と成果に対する、日本における周知の必要があり、第二には、フェミニスト経済学において、独自な概念と分析手法、それを使用する現状分析における新たな知見の発掘が、極めて大きな意義を持っている。第三には、グローバル金融危機以降の変化を、アジア、とりわけ中国などの新興経済諸国の動向をジェンダー視点から分析し、その最新動向に対する知見を得る必要性がある。これらは、とりわけ少子高齢化の急速な進展過程にある日本・東アジアにおいて、その重要性は明白である。 本年度において、東アジア、中国および韓国におけるフェミニスト経済学の認知の状況、マクロ経済へのジェンダー分析に対する研究成果の共有、また、グローバル金融危機以降のアジア経済の変化に対応するジェンダー分析の成果について、各国の聞き取りおよび成果の共有を行った。また、海外からの招聘を受けて、日本のフェミニスト経済学の手法による現状分析の成果を報告した。 また、経済理論学会、日本フェミニスト経済学会、国際フェミニスト経済学会、アジア女性会議、日中女性科学者会議、北京大学大学院招聘講演において、討論・発表・報告・講演を行った。また、経済理論学会誌における論文発表と共に書籍の執筆、フェミニスト経済学関連文献のデータベース構築、重要文献の翻訳を行い、若手研究者の育成および社会的貢献としての市民講座などで知識の共有をはかった。
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