研究課題/領域番号 |
20320004
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
盛永 審一郎 富山大学, 医学薬学研究部(薬学), 教授 (30099767)
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研究分担者 |
加藤 尚武 鳥取環境大学, 大学院・環境情報学研究科, 客員教授 (10011305)
山本 達 福井医療短期大学, リハビリテーション学科, 教授 (60100666)
今井 道夫 札幌医科大学, 医療人為区政センター, 教授 (70048130)
坂井 昭宏 桜美林大学, リベラルアーツ学群, 教授 (20092059)
松田 純 静岡大学, 人文学部, 教授 (30125679)
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キーワード | 生命 / 環境 / 尊厳 / 権利 / 価値 / 自律 / Personalitat / Personlichkeit |
研究概要 |
研究会全体の活動としては研究会2回(7/26東京と12/27京都)、講演会3回(R.Stoecker(ポツダム大学)9/12,9/16とA.Heide(エラスムス大学)11/15)を開催し、『生命倫理研究資料集IV』(2010,3,16.,363+vi)を刊行した。これらの活動を通じて、「尊厳」と「権利」概念は等価ではなく、機能的意味において「根拠・帰結関係」であるという昨年度の結論に立脚しながら、引き続き両概念の意味と関係について思想史的、規範的に考察した。Stoecker氏の講演は「尊厳を毀損する」事例(=死刑)から尊厳概念を解釈する試みであり、この試みから、死刑が尊厳の侵害であるのは、個人の尊厳や自尊心への攻撃ではなく、人間の自律の侵害であること、したがって尊厳概念の内包は自律であることが導き出された。Heide女史らによるオランダの終末期の意思決定調査からは、「尊厳」を重視する人は安楽死を、苦痛の除去を願う人はセデーションを選ぶというが導出され、このことから、尊厳と「精神」、権利と「身体」というように、両概念と心身二元論との関連が想定された。 また、「尊厳」概念には「能力」説と「天賦」説があるということ、天賦説は人間の存在が持つ尊厳であり、また能力説は、人間の生命の段階(発生過程等)に質的区別をもちこむことにより「Personと有機体の二元論」という非難を招くこと、この非難をのがれるためには、Harrisのように、Personalitatの喪失を人格の実存の終わりとして解釈せざるを得ないということ、また、価値を主観的能力に依拠させるHarrisのPersonalitatに対して、M.Quanteは、評価的能力という広いコンセプトに注目して、社会的承認過程の文脈において構成されるから、相互主観的価値評としての人格性(Personlichkeit)の概念を展開することにより、単に形式的でない自律の概念を目指していること、しかしこれにより再び二元論の非難を受ける可能性が出てくること等を知り得た。
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