研究課題/領域番号 |
20320004
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
盛永 審一郎 富山大学, 医学薬学研究部(薬学), 教授 (30099767)
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研究分担者 |
加藤 尚武 鳥取環境大学, 大学院・環境情報学研究科, 客員教授 (10011305)
品川 哲彦 関西大学, 文学部, 教授 (90226134)
今井 道夫 札幌医科大学, 医療人為区政センター, 教授 (70048130)
坂井 昭宏 桜美林大学, リベラルアーツ学群, 教授 (20092059)
松田 純 静岡大学, 人文学部, 教授 (30125679)
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キーワード | 生命 / 環境 / 尊厳 / 権利 / 価値 / 人格 / パーソン / 自律 |
研究概要 |
2回の研究会と各人の個別的研究を通じて、生命・環境倫理における尊厳・価値・権利概念に関する思想的・規範的研究を行った。またその成果の一端として『生命倫理研究資料集V』(206ページ、2011年3月16日)を刊行した。以下のことが明らかとなった。哲学的神学的概念としての尊厳概念が政治的概念としての権利概念と結びついたことにより、「権利を侵害されること」と「尊厳を穢されること」が同一のものとして捉えられた。しかし、「尊厳を持つこと」は、「権利を持つこと」と同一ではない。たしかに、空虚に見える尊厳の概念を権利から「開明」する見方もあるが、尊厳と権利とは由来も内容も異なる。なぜなら、人間の尊厳はすべての基本権の基礎と源泉である故に、人間の尊厳自体は権利ではないし、また尊厳は比較衡量不可能であるのに対し、権利とは絶対的ではなく、他の権利と義務に対して相対的だからである。人間の尊厳とともに価値が設定され、その保護のために権利が必要とされたのである。だから、「尊厳を持つこと」と「権利をもつこと」は、「同じ長さの辺を持つ三角形」と「同じ角度を持つ三角形」と同様に、外延的には等価であるが、内包的に同一であるとはいえない。人間の尊厳は人間の権利の存在根拠であり、後者は前者の認識根拠というア・シンメトリーな関係なのである。また尊厳と価値は異なる。なぜなら「何かを価値として評価することによって、その価値づけられたものは、ただ、人間のなす価値評価のための対象としてのみ、許容されることに他ならない」からである。また、オランダ・ベルギー・ルクセンブルクの安楽死法の比較を行った。その結果、オランダは「苦痛の除去」に基づく緊急避難(責任阻却)として、後者は患者の「自己決定権の尊重」に基づく権利の擁護として、という相違が明らかとなった。
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