研究課題/領域番号 |
20320005
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
水谷 雅彦 京都大学, 文学研究科, 教授 (50200001)
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研究分担者 |
伊藤 和行 京都大学, 文学研究科, 教授 (60273421)
出口 康雄 京都大学, 文学研究科, 准教授 (20314073)
杉村 靖彦 京都大学, 文学研究科, 准教授 (20303795)
神埼 宣次 京都大学, 文学研究科, 助教 (50422910)
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キーワード | 倫理学 / 生命倫理学 / 健康 / 公衆衛生 / 医療倫理学 / 科学哲学 |
研究概要 |
最終年度である2010年度においては、前年度までの理論的研究、とりわけノルデンフェルトとブールスの理論の比較検討ということに加えて、新たにK.A.リッチマンの『倫理学と医療の形而上学』を中心とした研究が遂行された。同書は、前二者の義論をふまえて、自らの「埋め込まれた道具主義」という斬新な健康理論を提供しており、これの精査は、本研究の理論的まとめをするにあたってきわめて有効であった。この点での研究成果は、本科学研究費研究と京都生命倫理学会と共催で開催した研究会(12月26-27日)においてワークショップの形で報告され、有意義な討論を行った。 昨年度より開始した、健康概念と現実的、具体的諸問題との関係に関する研究成果としては、昨年度までの研究成果を機縁として研究代表者が招待された2010年度日本公衆衛生学会大会におけるシンポジウム報告がある。本報告は、健康食品をめぐる様々な混乱を法的整備により解決しようとする多くの専門家の考えに対し、それの必要性を認めつつも、この問題の根本には健康概念の混乱、とりわけ専門家と素人の間の意思疎通の不備による混乱があることを、科学理論におけるアクターネットワーク理論を用いて指摘したものであるが、その反響は予想外に大きいものであり、その後も多くの報道関係の取材を受けた。 また、本研究の主要部分により獲得された成果は、医療に関わる統計学的問題、とりわけメタアナリシスに関する科学哲学的研究や、独仏の生命倫理学の再検討とドッキングさせることにより、より精緻な概念構築への道を拓いたといってよいであろう。
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