本研究の目的は、藤井正人、アスコ・パルポラ、井狩彌介の三人がインドでの現地調査でこれまでに入手してきた、ジャイミニーヤ派サーマ・ヴェーダおよびヴァードゥーラ派ヤジュル・ヴェーダに属する多数の写本を中心資料として、三人を含む国内外の専門研究者が分担・協力して、未知ないし未出版のテキスト、不完全な版しかないテキスト等を校訂し研究することによって、ヴェーダの新しい資料とそれに関する知見を遅滞なく学界に提供することである。近年、ヴェーダ学の分野においてもインドでの現地調査が本格的に行なわれるようになり、各地のヴェーダ諸学派の伝承の実態が解明されるようになった。それとともに、これまで知られていなかった文献、あるいは、知られていた文献の別系統のものなどが確認されることになった。それらの中で特に重要なものは、オリッサ州のパイッパラーダ派アタルヴァ・ヴェーダ、ケーララ州とタミルナードゥ州の二系統のジャイミニーヤ派サーマ・ヴェーダ、ケーララ州のヴァードゥーラ派ヤジュル・ヴェーダ、の三つの学派の文献伝承である。本研究は、これら三者の中から、伝承地域が重なり、さまざまな面で共通点や関連性があるジャイミニーヤ派およびヴァードゥーラ派の新資料の研究を連繋して行なおうとするものである。
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