本研究は、大衆的な視覚表象(イメージ)を文化遺産の観点から美学・美術史学的に考察することを目的とする。具体的には、まず、日本において「大衆」がはじめて成立した大正期に流通していた紙媒体の視覚文化に注目し、可能な限り詳細かつ広範囲な資料調査に基づいて、その全体像(注文・生産・流通・消費過程を含む)を明らかにすることを目指す。そのうえで、当該期の視覚文化を構成する大衆的イメージが「文化遺産」として継承されるとするなら、いったいどのような範囲のモノが、どのような形態で、いかなる理由によって、何を記念するものとして選ばれるべきかについて考察することを課題とする。 そのために、研究代表者・研究分担者・連携研究者、ならびに研究協力者は、それぞれの研究分担に応じて、個別的に、美学・美術史学的な問題を提起し、解決することを試みるとともに、次の2つの種類の共同プロジェクトを行うものとする。 (1)第1に、国内の研究者が個別的な研究成果を、主として「大正イマジュリィ学会」のシンポジウムにおいて、相互に確認し、総合化すること。 (2)第2に、国内と海外の研究者が、「文化遺産としての大衆的イメージ」公開講演会を国際シンポジウムとして開催し、日本の内と外から、大衆的イメージの文化遺産としての価値を議論することである。
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