研究概要 |
研究代表者小田部は、「ヨーロッパーアジア」という理論酌枠組みの成立を明らかにするために、文化のグローバリゼーションの過程を理論的に三段階に分け、グローバリゼーションの類型化・理論化を試みた。小田部によれば、東西が同一の世界像を共有しはじめるのは17世紀初めのことであるが、17-18,世紀にはなお東西がそれぞれの幻想を他者に投影する傾向が強いのに対し(第1段階)、19世紀になるとヨーロッパによるアジアの囲い込みの言説が確立する(とりわけヘーゲル主義によって)(第2段階)。しかし、20世紀になるとヨーロッパの言説を自己のものとしたアジアが,ヨーロッパの言説を利用しつつそれを改変することによって自己主張し、またヨーロッパもそうした言説を一部受け入れるようになり、ヨーロッパーアジアの間に相互作用が成り立つようになる(第3段階)。この点について小田部はドイツ学術交流会東京事務所30周年記念シンポジウム(明治学院大学)、カッセル大学における公開講演会、第6回アジア芸術学会(台湾・台北)において報告した。 研究分担者渡辺は、「ワールドミュ7一ジック」のコンテクストが従来のさまざまな音楽的実践をいかに変容させ、それを音楽として「発見」「利用」したのか,この点に関心を寄せ、いくつかの例に則してこの点を検討した(たとえば、文字が発祥の地とされる「バナナのたたき売り」が「芸能」として、あるいは「音楽」として発見される過程、さらに本来カトリックの典礼の一部であった「レクイエム」が近代において芸術として自立する過程、など)。このことを通して、渡辺は従来の西洋的な美学や芸術研究が芸術をいわば特権的に扱ってきた一面性を明らかにし、「文化資源」を一つのキーワードとして芸術を成立させるコンテクストを明らかにした。
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