研究課題
小田部は、1920年代から40年代にかけて活躍した京都学派の哲学者木村素衞の哲学・美学思想を間文化的な視点から読み解き、その成果を著書『木村素衞-「表現愛」の美学』(講談社)にまとめた。また、北京大学で8月に開催された国際美学会においては、個人発表においてカール・レーヴィットの日本滞在の意義を間文化的な観点から分析するとともに、シンポジウム「アジアの美学」では日本における白楽天イメージの変遷を9世紀から18世紀まで追うことによって、日本という中華文明における周辺国が中国との対比において自己の文化をいかに位置づけようとしたのか、を分析した。さらに、2009年にブレーメンで開催されたシンポジウムをもとにしたロータール・クナーツ、ノルベルト・カスパーとのドイツ語による共編著『文化的同一性と自己像-日本とドイツにおける啓蒙と近代』(ベルリン)を2011年3月に公刊したが、これは本科研費による研究の総決算の一つともいうことのできるものである。渡辺は、明治期以来の「唱歌」およびその系譜の音楽(卒業式の歌、校歌、都道府県歌)や戦後のうたごえ運動の考察を著書『歌う国民-唱歌、校歌、うたごえ』(中公新書)にまとめ、そもそも「芸術」ではなく、国民を作り上げるための「道具」であったものが、日本人の「心の原風景」とみなされるにいたった過程を、さまざまの力学の織り成す場として解明した。これは、唱歌等の音楽を単に音楽的側面から考察するのではなく、むしろそれを取り巻く社会的・政治的環境とのかかわりの中で捉え返す試みであり、国民文化論に対して新たな一石を投じるものである。
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Christian Danz und Jorg Jantzen (Hg.), Gott, Natur, Kunst und Geschichte. Schelling zwischen Identitatsphilosophie und Freiheitsschrift
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Internationales Jahrbuch fur Hermeneutik
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International Yearbook of Aesthetics
巻: 14 ページ: 142-159
文学
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http://www.l.u-tokyo.ac.jp/bigaku/staff.html#otabe