研究課題/領域番号 |
20320021
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小田部 胤久 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (80211142)
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研究分担者 |
渡辺 裕 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (80167163)
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キーワード | 文化の重層性 / 文化接触 / 芸術の発見 / 文化のグローバル化 / ワールドミュージック / 欧亜の反照性 / 間文化的美学 / 文化資源 |
研究概要 |
本研究は、これまで<ヨーロッパ的なもの>ないし<日本的なもの>とみなされてきたものが実は東西の理論的共働によって成り立っていることを<間文化性>という観点から明らかにするものである。 小田部は本年度、三つの課題と取り組んだ。第一に、論文「坂部哲学に<ふれる>ために-美学からの試論」において、20世紀後半を代表する日本の哲学者坂部恵(1936-2009年)の哲学的発展を系譜学的に辿り返すことによって、後期における日本語(例えば「ふれる」「まう」など)による哲学が、彼の初期のカント研究、および晩年の「ヨーロッパ精神史」観と密接にかかわることを明らかにし、第二に、元国際美学連盟会長ハインツ・ペッツォルト70歳記念論文集への寄稿論文(送付済み、未公刊)において、文化的グローバル化の一環として「文化接触」を捉え、それを歴史的に三段階にまとめつつ、それぞれを特徴づける概念として、他文化の<Idealisation>・他文化の<Acculturation>・諸文化相互の<Interculturation>に着目し、第三に、本年度冬学期に東京大学文学部の外国人研究員として滞在したウルリヒ・シュタインフォルト氏(元ハンブルク大学教授、現在ビルケント大学教授)と西田幾多郎、田辺元、和辻哲郎のいくつかのテクストに見られる「自己」の概念をめぐって共同研究を行った(その成果は近日中に公表の予定)。 渡辺は、日本の近代化における<日本的なもの>の表象の変遷を、映像資料(小樽に関する)、言説資料(日本橋に架ける高速道路に関する)に基づいて分析し、今日<日本的なもの>とみなされているものが決して伝統的なそれと同一ではなく、むしろ近代西洋(あるいは<西洋的なもの>と表象されたもの)とのさまざまな軋轢のもとに形成されたことを明らかにした。
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