まず年度前半については、当該研究課題に関連した文献資料の収集を、とりわけ西洋の事例に関して精力的に行なうと共に、文献調査に基づいて東西の画像伝説の収集・整理に着手した。さらに夏期休暇期間中に研究代表者と連携研究者2名が海外(ドイツ、オーストリア、イタリア、ギリシア)においてそれぞれ10日間ほどの古代ギリシア・ローマおよび中近世西欧の事例についての調査を行なった。また研究代表者は別件でブイレンツェを訪れた際に、研究協力者でもある在フィレンツェ、ドイツ美術研究所長ヴォルフ氏と会い、今後の研究の方向性および次年度以降に予定されるシンポジウムに招聘する研究者の人選について議論した。年度後半は、さらに東西の霊験像の具体的事例についての画像・文献資料の収集・整理に着手し、データベース構築の基礎作業を行なった。これらの内西洋中世の事例については、研究代表者が中心となって、収集されたデータの分析を行ない、その成果を紀要論文にまとめた。また年度前半に交流する機会を得たモスクワ東方キリスト教文化研究所長リドブ氏からは折に触れ情報交換を行っており、来年度6月にモスクワで開催される予定の国際研究集会「Spatial Icons」に東西比較的視点での本研究課題についての講演を依頼された。その公刊用アブストラクトは既に入稿済みである。今年度の作業からも像の生動化ないし生動性というテーマは比較宗教美術史にとって有効なモデル・ケースである可能性が強く浮かび上がってきているが、このことは海外研究者の反応からも明らかであると思われる。
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