年度を通じて、当該研究課題に関運した文献及び図像資料の収集を、とりわけ西洋の事例に重点をおいて遂行するとともに、東西の画像伝説の比較的観点からの収集・整理を順調に進めた。夏季休暇期間中には研究代表者と連携研究者がフィレンツェ、ウィーン、ヴェネツィア等において文献・作例調査を行ない、フィレンツェにおいては前年同様ドイツ美術史研究所長ヴォルフ氏と研究情報の交換および打ち合わせを行なった。研究分担者は適宜国内各所において同様の調査を行なった。さらに同2名は3月にもそれぞれローマ、ウィーンとパリ、ハノーファーにおいて同様の調査を遂行した。また研究分担者は国内において適宜関連文献・作例の調査を行ない、成果の一部を論文として発表した。研究代表者は6月にモスクワ、ロシア芸術アカデミーにおける国際研究集会およびエジプト、アレキサンドリア図書館におけるシンポジウムで、これまでの研究成果にもとづく像の生動性に関する東西宗教文化間の比較についての発表を行ない、好意的な反応を得た。成果は次年度内に英語により発表される予定であり、原稿も入稿し終えている。研究会は7月と2月に行なわれ、古代ギリシア・ローマにおける生動性伝説についての発表、近代初期における機械仕掛けの絵画、中近世キリスト教の典礼における像と人との共演についての発表が行なわれ、活発な議論が行なわれ、二つ目の発表の成果は年度内に論文として刊行された。また年度後半には、次年度初頭に予定されるシンポジウムの準備も、8月にフィレンツェで行なわれたシエナ大学教授バッチ氏との打ち合わせに則りつつ、行なわれた。こうした活動を通じて、像の生動性をめぐる普遍性と宗教文化間および時代観の差異がより一層明確にんるとともに、比較就航美術史的手法の有効性が一段と確認できた。
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