研究課題/領域番号 |
20320024
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
山口 和子 岡山大学, 大学院・社会文化科学研究科, 教授 (90093476)
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研究分担者 |
西村 清和 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (50108114)
長野 順子 神戸大学, 大学院・人文学研究科, 教授 (20172546)
川田 都樹子 甲南大学, 文学部, 教授 (00236548)
前川 修 神戸大学, 大学院・人文学研究科, 准教授 (20300254)
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キーワード | アブジェクト / 反芸術 / 視覚中心主義 / サイ・トゥオンブリ / セクーラ / クロード・カーアン / シンディ・シャーマン / ジェンダー |
研究概要 |
ポストモダンともよばれる現代における芸術の多様な拡大は、既成の芸術学・美学や美術史の方法論をも脅かすがごとき状況を呈している。本共同研究は、写真映像の特性と、芸術におけるこのようなポストモダン現象との関係を考察する事を目標としているが、最終年度にあたる今年度は、過去2年間の研究を踏まえ、次のような研究を展開した。山口は、現代のアートシーンにおける芸術概念の拡大と映像との関係を、主要にブラッサイ、メープルソープの映像の特徴の分析を介して明らかにした。西村は、現代のアートシーンにおける醜の美学の新たな基礎付けを、特にアブジェクト、ディスターベーションのカテゴリーに属する作品の分析を介して行った。長野は、シュルレアリズム期の特異な存在であったユダヤ系フランス人クロード・カーアンのセルフ・ポートレート写真、フォト・モンタージュと文章テクストとの組み合わせについて考察し、現代アーティスト、シンディ・シャーマンの試みとの比較を行い、自我概念の変容を分析した。川田は、現代におけるポストモダン的な傾向を示す画家、サイ・トゥオンブリにおける写真と絵画の関係の考察を介して、モダニズム絵画の「視覚」中心主義がいかに克服されたかを明らかにした。前川は、セクーラのアーカイブ論を介して、従来の写真論が陥っているディレンマに別の視点を開くとともに、デジタルとアナログ写真における文脈と写真言語との相違を考察した。以上の考察を介して、写真映像の特性と現代のアートシーンへのその影響関係に明確な輪郭が与えられたと考えられる。また、現代アートと写真の関係への、美学、美術史学、ジェンダー論、映像論の多面的な視点からのアプローチはこれまでにはなされてはい。なお、本共同研究の成果は科研共同研究成果報告論文集『ポストモダンにおける芸術と写真』(23年3月31日発行)に上梓されている。
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