海外調査として、馬渕は9月にポーランド・クラクフの日本マンガ美術技術博物館で型紙コレクションの調査を行い(長崎と手塚が同行)、同月パリ・装飾美術館の型紙コレクションの調査を行った(長崎が同行)。パリ装飾美術館での調査は2009年度から計3度におよび、全1500点の型紙の詳細な調書を作成して今後の研究に役立てるデータをまとめた。池田は前年度末に調査を行ったチェコとハンガリーにおける型紙コレクションについて、その調査結果を取りまとめ、また、ドレスデン工芸博物館、ハンブルク工芸博物館、ヴュルテンベルク州立博物館、オーストリア応用美術館において、主に型紙からの影響が認められる美術・工芸作品の調査を行った。新たにスイス国内の型紙コレクション(主にベルン歴史博物館)の聞き取り調査を行った。高木は、9月と3月にグラスゴー、エディンバラ、ロンドン、ブリュッセルで、型紙とその影響の調査を行った。 これらの調査の結果、まず型紙そのものの歴史的な変遷に関して、連携研究者である長崎巌が新知見を発表し、また池田と馬渕は永井隆則編『デザインの力』において各1章を担当した。馬渕は「KATAGAMIというデザインの力」においてイギリス、アメリカ、イタリアなどのデザイナーが型紙をどのようなコンセプトでデザインに応用したかを論じ、池田は「<デザイン>前夜」の章を担当して20世紀初頭にドイツにおいて工芸kunstgewerbeという用語概念に関するいくつかの議論を提示し、のちにデザインという用語に取って代わられるこの語の意味しを論じた。また高木はロンドンのデザイン工房シルヴァー・スタジオで、型紙ないしは日本の平面デザインがどのような作品にどのような原理で応用されたか、またそれらの社会的意味を論じた。
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