研究課題/領域番号 |
20320044
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研究機関 | 放送大学 |
研究代表者 |
草光 俊雄 放送大学, 教養学部, 教授 (90225136)
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研究分担者 |
鈴木 雅之 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (50091195)
鈴木 美津子 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (60073318)
ALVEY なほ子 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (20313174)
大石 和欣 放送大学, 教養学部, 准教授 (50348380)
笠原 順路 明星大学, 人文学部, 教授 (00194712)
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キーワード | ロマン主義 / 旅行 / 言説 / 国家意識 / 国民意識 |
研究概要 |
本科研初年度にあたる平成20年度は、国民意識の形成がイギリスの帝国主義的覇権の拡張にしたがってどのように変化していったのかについて、各研究者がそれぞれの研究機関において基礎調査を中心に行った。同時に旅行や移動がロマン主義文学においてどのように受容されていたかについても大枠をとらえる試みを行った。 基礎調査が中心であるために大きな研究成果はまだ上がっていないが、いくつか新しい発見と公表が行われた。笠原が海外で発表したように「死にゆく闘士(グラディエイター)」のイメージを詩に取り入れたバイロンの作品には、拡張する自我意識と収縮していく自我意識が混在し、そこに崇高の美学とロマン主義的な意識の誕生がある。一方で大石が公表したように、奴隷貿易とその廃止運動の中に福音主義的宗教意識と混じるようにして、アメリカ独立戦争およびフランス革命前後のイギリスが経験した国民意識の再構築が行われ、さらに帝国覇権の伸張と並行して起こった移民の現象が、帝国内部に包摂された自我としての外国人の表象と言語的な拡散を生んだ。鈴木美津子は、アイルランドの十九世紀初頭の小説を取り上げて、そこにアイルランドにおける国民意識がイングランドという外圧を軸にして再構築され続け、それがイングランドの文学作品とは異なる異国の表象を提示している結果を生んでいることを指摘した。アルヴィは北米におけるイギリスの地図作成をとりあげ、そうした地政学的な調査が文学作品にも影を落とすと同時に、領土拡張が国民意識の脱構築につながっている形跡があることを口頭発表にて指摘した。 二年目にはまだ成果のあがっていないアフリカやインド(アジア)の表象を中心にして課題全体の成果をあげるべく研究を進めていく。
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