研究課題
現代言語理論において中心的な役割を果たしている生得的な構造条件であるc-commandに関し、日本語を獲得中の幼児(2-5歳児)を対象に、言語心理学的手法(心理実験と自然発話分析)及び脳科学的手法を用いて、心理レベルと脳レベルの両面から、その脳内における所在と発達過程を明らかにすることが本研究の目的である。生得的な構造条件であるc-commandとは、抽象的な階層性を有する文構造に基づいて定義され、様々な言語の多様な文法現象に関わっている重要な性質であると考えられている。例えば、日本語に関しては、数量子浮遊((i)大学が教員を2名採用した.(ii)*大学が教員から2名寄付を受けた.)、照応詞束縛((i)太郎が自分の絵を見つけた.[太郎=自分](ii)太郎の弟が自分の絵を見つけた.[太郎≠自分])等の言語現象の説明において中心的な役割を担っている。平成21年度の前半は、以上の研究目的に基づき、平成20年度後半に実施した成人を対象とした実験結果について考察を行った。実験には、非侵襲的な機能脳画像研究手法であるNIRSを使用し、数量詞浮遊現象に基づいた言語刺激パラダイムを用いたものであった。その研究成果は、第32回日本神経科学大会、Neurobiology of Language Conference 2009、Society for Neuroscienceにおいて発表した。平成21年度後半は、以上の学会発表に対するコメントに基づき、成人被験者を対象として、NIRSを用いた追加調査を実施し、平成22年度に論文として投稿するための準備を行った。また、平成21年後半には、幼児を対象とした予備実験も行い、平成22年度早々に幼児を対象とした本実験が行えるように、浮遊数量詞を用いた言語刺激パラダイムについて詳しい検討を行った。
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