研究課題
現代言語理論において中心的な役割を果たしている生得的な構造条件であるc-commandに関し、日本語を獲得中の幼児を対象に、言語心理学的手法(心理実験と自然発話分析)及び脳科学的手法を用いて、心理レベルと脳レベルの両面から、その脳内における所在と発達過程を明らかにすることが本研究の目的である。生得的な構造条件であるc-commandとは、抽象的な階層性を有する文構造に基づいて定義され、様々な言語の多様な文法現象に関わっている重要な性質であると考えられている。例えば、日本語に関しては、数量子浮遊((i)大学が教員を2名採用した.(ii)*大学が教員から2名寄付を受けた.)、照応詞束縛((i)太郎が自分の絵を見つけた.[太郎=自分](ii)太郎の弟が自分の絵を見つけた.[太郎≠自分])等の言語現象の説明において中心的な役割を担っている。平成22年度は、平成21年度後半に実施した成人を対象としたNIRSによる追加計測(数量詞浮遊現象に基づいた言語刺激パラダイムを使用)のデータを含めた、成人対象の全計測データの解析結果について検討した。その検討結果については、国際学術雑誌への投稿論文として纏め、本報告書作成時点において、最終調整中である。また、幼児を対象とした心理実験及びNIRSによる計測も行った。実験により得られた計測データの解析結果を検討し、第33回日本神経科学大会、Neurobiology of Language Conference 2010、Society for Neuroscience 2010において成果報告を行った。さらに、平成22年度後半には、数量詞浮遊現象に基づく幼児対象のNIRS計測のデザインについて検討した。幼児対象を対象とした心理実験により、計測デザインの妥当性について検証した。その上で、NIRSによる計測を行い、計測結果の解析を行った。
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