研究概要 |
本研究の目的は、日本語の文理解における名詞句と動詞の統合過程を心理言語学の観点から考察することである。特に、脳波の一種である事象関連電位(Event-Related Potentials, ERP)を指標として、脳内での時空間特性を検討することによって、文理解に関する理論的・実証的研究を行う。精密で豊富な実験データを基にして、名詞句と動詞がどのようなプロセスを経て統合されていくのかに関するモデルを構築する。 平成21年度には、脳波を用いた言語実験のために必要な機器・設備の購入・設置を済ませ、機器等の稼動状態を確認し、いくつかの実験データの収集を試験的に行った。また、対応する他動詞を持つ非対格自動詞を用いた実験文のリストを作成し、本研究の実験刺激となる「実験文」の作成を終了した。さらに、パソコンを用いた文呈示実験で反応時間などを計測可能な実験用のソフトウェアの開発がほぼ終了し、現在はバグの修正などを行っている状況である。また、平成22年2月6日に九州大学文学部において科研成果報告会を開催した。発表者は、諏訪園秀吾「漢字の読みに関するERP成分について」・荒生弘史「時間的処理とERP:拍の分割に対するミスマッチ反応」・安永大地「ERP測定並びにデータ解析システムについて」の3名で、坂本勉が総合司会を務めた。 平成22年度は、実験に用いる刺激文の選定を完了し、非対格自動詞と対応する他動詞に関する実験を行う。
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