研究概要 |
本研究の目的は、日本語の文理解における名詞句と動詞の統合過程を心理言語学の観点から考察することである。特に、脳波の一種である事象関連電位(Event-Related Potentials, ERP)を指標として、脳内での時空間特性を検討することによって、文理解に関する理論的・実証的研究を行う。精密で豊富な実験データを基にして、名詞句と動詞がどのようなプロセスを経て統合されていくのかに関するモデルを構築する。 平成22年度は、これまでに構築した実験装置を用いて、日本語の二重を格制約に関する実験データなどを収集した。さらに、対応する他動詞を持つ非対格自動詞を用いた実験文のリストを作成し、本研究の実験刺激となる刺激文の選定を完了し、パイロット実験を行った。現在は、その結果を整理して、理論的考察を行っている段階である。また、平成23年2月19・20日に九州大学文学部において科研成果報告会を開催した。発表は、坂本勉「二重対格制約違反によって生じるERPについて」、諏訪園秀吾「P600 vs P3bその類似性について(P600のP3bらしさについて)」、荒生弘史「広国大での脳波計測システムの構築と脳波データ」、安永大地「Neuroscanを使用した実験環境の構築と分析用プログラムの開発」、備瀬優「否定呼応に関する心理言語学的考察-シカナイ構文における認可処理の検討-」、小野創「日本語のアスペクトミスマッチ/LAN」、時本真吾・宮岡弥生「事象関連電位に観る敬語規則:尊敬語と謙譲語」の7件で、坂本勉が総合司会を務めた。この発表会はオープン形式で行われ、17名の参加者があり、活発な議論が展開された。 平成23年度は、より大量で詳細な実験データを収集し、理論的考察を深めていく。研究成果を学会などで発表し、論文の作成を行う。
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