研究課題/領域番号 |
20320061
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
坂本 勉 九州大学, 人文科学研究院, 教授 (10215650)
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キーワード | 動詞予測 / 二重ヲ格 / 脳波実験 / P600 / 照応解釈 |
研究概要 |
今年度の研究実績は以下のとおりである。 (1)語順(SOV-OSV)が、文末に出現するであろう動詞の予測にどのように影響するかについての研究を行った。その成果を、「思考と言語研究会」「日本認知科学会」「人工知能学会言語・音声理解と対話処理研究会」で発表し論文にまとめた。 (2)従来、日本語文法研究において、非文法的であるとされてきた二重ヲ格表現(太郎が花子に本を読ませた。vs.*太郎が花子を本を読ませた。)に対して、脳波を用いた実験を行った。実験の結果、統語的逸脱を示すP600成分が観察された。よって、この非文法性に対する生理心理学的な証拠を手に入れることができた。その成果を、「人工知能学会言語・音声理解と対話処理研究会」で発表し、論文にまとめた。 (3)照応関係の処理プロセスに関する脳波実験を行った。例えば、「タヌキさんに太鼓がたたけたよ。」「ニワトリさんにもだよ」。のように、先行文脈に続いて「~にもだ」が出現した時に、言語表現としては明示されないが、文解釈のためには復元可能でなければならない構造である。その成果を、「日本言語学会」で発表した。 (4)公開ワークショップとして、『脳波から見た認知処理-日本語の文処理を中心に』を、平成24年2月11日(土)12日(日)に、九州大学文系キャンパスにて開催した。11件の発表、28名の参加があり、盛会であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳波実験のための機器の購入・設置・運用の全ての面において順調に計画してきたことを達成できている。また、実験の対象となる日本語のいくつかの構文についての実験を行い。その結果を学会や研究会で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
この研究の目的は、日本語の「名詞-動詞」の間の関係を母語話者がどのように処理しているかを探求することである。そのためにいくつかの構文(名詞の格と動詞のミスマッチを含む文など)を実験対象としてきた。今後は、さらに多様な構文を対象としていくことによって研究の幅と深さを追及していくことが必要である。 また、研究成果の発表として、論文の形にすること、特に英文論文の作成が必要である。
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