研究概要 |
本研究の目的は、日本語の文理解における名詞句と動詞の統合過程を心理言語学の観点から考察することであった。脳波の一種である事象関連電位(Event-Related Potentials, ERP)を指標として、脳内での時空間特性を検討することによって、文理解に関する理論的・実証的研究を行った。 平成20年度は、脳波を用いた言語実験のために必要な機器・設備の購入・設置を済ませた。平成21年度には、機器等の稼動状態を確認し、いくつかの実験データの収集を試験的に行った。平成22年度は、これまでに構築した実験装置を用いて、日本語の「二重ヲ格制約」に関する実験データなどを収集した。平成22年度は、この問題に関して、より大量で詳細な実験データを収集し、理論的考察を深めた。従来、日本語文法研究において、非文法的であるとされてきた「二重ヲ格表現」(「太郎が花子に本を読ませた」vs.「*太郎が花子を本を読ませた」)に対して、脳波を用いた実験を行った結果、統語的逸脱を示すP600成分が観察された。よって、この非文法性に対する生理心理学的な証拠を手に入れることができた。その成果を、研究会等で発表し、論文にまとめた。 さらに、対応する他動詞を持つ非対格自動詞を用いた実験文(「体重が増える」「*体重を増える」「体重を増やす」「?体重が増やす」)のリストを作成し、脳波実験を行った。現在は、その結果を整理して、理論的考察を行っている段階である。 なお、平成21年度より、毎年1回、連続で4回、九州大学において、科研成果報告会を開催した。
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