研究概要 |
人文科学、社会科学、工学の合計180編の原著論文について構成要素や構造の分析を行った結果、論文のタイプとして、「実験・調査型」「理論構築型」「文献解釈型」「論説型」「複合型」の5つの類型が認められた。これらの構造型の出現の仕方にはある程度分野による特徴が見られるが,分野を越えて同様の構造型が認められるケースも多いことがわかった。また、同じく論文の構成要素に直目して、人文科学・社会科学・工学の合計270編の日本語原著論文を対象に、学術論文の導入部分における展開の型の分野横断的な比較を行った。その結果、共通点として「研究の対象と背景の説明」→「先行研究の提示・検討」→「研究目的・研究行動の提示」という典型的な展開の型が確認された一方で、分野や雑誌による展開の違いが明らかになった。また、冒頭章以降の章で研究目的・研究行動の提示が再帰する「課題設定再起型」のパターンが観察された。上記2つの研究により、論文の構造についての横断的な研究の可能性が明らかになり、日本語の論文の構造の「可視化」への道筋を示すことができた。 さらに、昨年度に開発した教材を用いた実践を行い、その結果をもとに授業での活用の可能性を示した。論文のテーマの絞り込みから研究計画の具体化へと至る「研究ストラテジー」の養成、研究計画書や論文のスキーマの形成、論文の分析的な読みを通した論文作成能力の養成など、さまざまな段階での本教材の活用の可能性が明らかになった。また、本教材は,留学生のみならず日本人学生に共通して活用できること,論文作成に直面する学部後半や大学院の学生だけではなく,日本語のアカデミック・ライティングの入門期の学生にも,日本語の文章語の知識や技術を指導する教材として有効であることも確認された。
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