研究概要 |
本科研プロジェクトは、テクスト理解にかかわる言語(語彙)とそれに関する知識(語彙知識)について理論的・記述的・実証的研究を行い、その結果に基づき言語教育に向けての有益な示唆を提供することを目的とする4年計画プロジェクトで、初年度にあたる2008年度は以下の活動を行った。 言語習得研究としては、初中級から超級までの日本語学習者を対象にした語彙テストの開発のために、関連先行研究からの知見に基づいてテスト形式と対象語の選択について検討し、日本語能力試験出題基準(2002)と複数の種類の辞書を用いて、品詞、語種、意味領域、語形成などを考慮して対象語を選定し、語義テストと語連想テストの問題を作成した。そして、作成した問題を使用した予備調査を、中国在住の学習者および教師、国内在住の学習者および母語話者を対象に行い、テストデータを収集した。中国調査では、語彙の他、文理解、会話・口頭発表についても言語テストによるデータ収集を行った。テクスト分析研究としては、読解研究分野で用いられている主要な分析方法を検討し、日本人英語学習者の物語文の再生データをテクスト記憶と語彙習得の観点から分析した。これら研究成果の一部は国内外の学会にて、または学術雑誌論文として発表した(堀場・松本,2008、Horiba,2008、Horiba&Fukaya,2009)。 言語研究としては、事象アスペクト現象について長年の研究成果を著書として出版し(岩本,2008)、テンス・アスペクトにおける状態化の類型、および、文解釈における文脈による意味補給について理論的研究を行った。また、語彙の地域性について、文脈中の一人称代名詞「自分」の出現を調べるために明治・大正・昭和初期の小説・戦記・シナリオ・辞書・文法書を対象にした調査を行った。
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