研究概要 |
本研究プロジェクトは、テクスト理解にかかわる言語(語彙)とそれに関する知識(語彙知識)について理論的・記述的・実証的研究を行い、言語教育に向けての有益な示唆を提供することを目的とするプロジェクトで、最終年次にあたる2011年度は以下の活動を行った。 言語習得研究班は、まず、本研究プロジェクトにて開発した中級~超級学習者対象の日本語語彙テスト(JWMT:語義テスト、JWAT:語連想テスト)の応答データを、語の頻度と種類(品詞および語種)、連想の種類、母語、学習環境などの影響について分析した。また、簡略版テストを用いて日本語学習者の語彙知識と読解の関係を調べるための実験を複数行った。Horiba(2012)を発展させた実験1では学習者(65名)の語彙知識の多面性と読解の関係を調べた。実験2は語彙知識が読解と作文にどう関わるかを調べるために韓国人日本語学習者(63名)を対象に行った。また、読解におけるタスク効果についての先行研究(Horiba,2008;Horiba&Fukaya,2012)を発展させた実験を複数行った。実験3は語彙知識とタスク指示が説明文読解に与える影響を調べるために日本語学習者(30名)を対象に行った。実験4は語彙知識とタスク指示が読解と作文に与える影響を調べるために英語学習者(75名)を対象に行った。 言語研究班は、共通語、東京語の基盤となる首都圏方言の実態を探るため、神奈川県小田原市において86歳から11歳までの72名を対象に音声・アクセントを中心に調査を行い、その結果をまとめた。また、テクスト理解のための主要要素となるテンス・アスペクト解釈の類型論について、事象投射理論(岩本2008)に基づく研究方法を発展させた。特に、言語間によって異なる語彙化パターンがアスペクト解釈に及ぼす影響、事象のアスペクト特性の決定方法に関わる強制の役割、アスペクト範疇の判定方法などについて重点的に研究を行った。
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