研究課題/領域番号 |
20320076
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
椎名 紀久子 千葉大学, 言語教育センター, 教授 (40261888)
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研究分担者 |
嶋津 格 千葉大学, 専門法務研究科, 教授 (60170932)
南塚 信吾 法政大学, 国際文化学部, 教授 (50055315)
森川 セーラ 千葉大学, 言語教育センター, 特別語学講師 (80506882)
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キーワード | クリティカル思考 / 論理的発表力 / 教材と指導法 / 英語のリテラシ / 日本語のリテラシ |
研究概要 |
本科研の最終目的は、母語としての日本語と外国語としての英語で「批判的に読解」(Critical Reading)し「論理的に発信」(Logical Presentation)できる力を、小中高大で系統的に育成する指導システムを構築することにある。 「批判的思考力」(クリティカル・シンキング:以後CT)とは、「複数の視点から他者の意見を理解し、自己の考えを客観的に精査して論理的に思考できる力」と2008年度に定義したが、独創的な解決策を生み出すには必須の要素である。グローバル社会にあってはこのCTを使って「英語で発信」できることが不可欠で」それには、はじめに「母語としての日本語」でその力を育成しておくことの重要性は論を俟たない。 しかしながら日本では「批判的思考」(Critical Thinking)は他者を咎めることかのように誤解され、国語科目をはじめ大半の教科で指導のプロセスから意図的に外される傾向がある。そこでCT養成を伴った母語指導の方法論を探るために、2009年度、椎名は思考力、特にクリティカル・シンキングこそ教育の要とする英国やドイツ、オーストリアを訪問して、各国の母語教育(リテラシー教育)の現状を、指導法・カリキュラム・教材の観点から分析した。さらに、英国のエディンバラ大学において、日本人の文章表現・口頭表現における論理構成が西洋人のそれと比較してどのような特徴を持つのかについて比較研究を試みた。エディンバラ大学大学院に在籍するアジア系(日本、韓国、中国)とアラビア系(エジプト)の大学院生の書いたタームペーパーの文章構造を英国人学生のそれと比較し分析し、Dr Rosemary Douglas、Dr Tony Lynch、Dr Cathy Bensonから多くの知見を得た。ケンブリッジ大学では、英国の大学入学試験科目のひとつとして課される「クリティカル・シンキングのテスト」の作成に携わる研究者からも意義深い指導を受けたほか、分担者の森川とともにThinking Skillに関するセミナーやワークショップに参加した。 歴史学者の南塚は、高校の歴史教科教員が組織する研究会で批判的思考を刺激する世界史教材を使用したセミナーを行うなどして、教育現場に密着したCTの養成方法について研究した。 法哲学者の嶋津は大学生対象に、「臓器移植法改正」を題材にした意見文の作成指導を行い、クリティカルでロジカルな思考の仕方やエビデンスの挙げ方、リバッタル(反論)のスキルについて指導した。さらに「沖縄県青少年保護育成条令違反での実名報道」を題材にして、「疑問を持ちながら理解するプロセス」(CT)についても指導した。以上、研究代表者をはじめとして3名の分担者のいずれもが教育現場を重視したクリティカル/ロジカル・シンキングの研究活動を活発に行い、一定の成果をあげることができた。
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