英語母語話者の話す英語の速度があがると、英語を外国語として学んできた日本人の聴き取り能力にどのような変化が生じるのかを研究の中心においた。これまでの研究において、母語話者の会話には一定の速度分布が生じることを我々は明らかにしてきた。そうした分布は日常会話だけでなく、ニュースや映画、そして管制官とパイロットとのやりとりである航空管制にも発現するが、この速度の分布とリスニングカとの関係は明らかではなかった。この関係を明らかにすることで日本人のリスニングの問題点にもう一歩迫ることができるだけでなく、リスニングトレーニングのメソッド開発にも貢献するであろうと考えた。 被験者を用いた実験の結果、日本人は母語話者の会話速度が5 syllables per second(sps)あたりから聴き落しが始まり、6spsを超えるあたりからリスニング能力が急激に低下することが分かった。速度がもっと速くなり7spsや8spsの領域になると聴き取りは深刻な状況を示す。 聴き取り能力低下の傾向と会話の速度分布図を重ねると、日本人のリスニングの実態が見えてくる。母語話者の平均的会話速度の5spsですでにリスニングに問題が生じ始めるため、母語話者のナチュラルな会話に対応するのは容易なことではないことが分かってきた。これは英語圏の大学や大学院を卒業した英語の上級者と考えられている人達にも当てはまり決して初級者や中級者だけの問題ではない。 この速度対応力実験は、航空英語の聴き取り実験の先行研究的な位置づけで行った。次のステップでは航空英語を対象とした速度対応力実験を行いたい。
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