研究課題/領域番号 |
20320092
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
山田 賢 千葉大学, 普遍教育センター, 教授 (90230482)
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研究分担者 |
安田 浩 千葉大学, 文学部, 教授 (40114219)
岩城 高広 千葉大学, 文学部, 准教授 (90312925)
久留島 浩 国立歴史民俗博物館, 研究部歴史研究系, 教授 (30161772)
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キーワード | 比較史 / 国民国家 / 東北アジア / 近代移行期 / 秩序構想 / ナショナリズム / 国際情報交換 / 中国 |
研究概要 |
本研究の目的は、中国大陸・朝鮮半島・日本列島を包摂する北東アジア諸地域を中心的な対象に据えつつ、近代移行期においてそれぞれの社会のうちに胚胎された多様な秩序構想と、そのせめぎ合いの果てに「国民国家」とナショナリズムが生成されていく過程を、比較史的に検討することにある。この目的に沿って、連携研究者と国内外の研究協力者を加えた全メンバーを、調査対象地域の別に基づく3つのユニット-日本列島基層社会研究班、北東アジア比較研究班、ユーラシア広域研究班-に組織し、それぞれが自己のフィールドにおいて調査を実施するとともに、海外の研究機関と連携しつつ研究を進めた。山田は浙江工商大学日本文化研究所を訪れて本研究プロジェクトへの協力を要請したほか、中国社会史学会国際シンポジウム(於中山大学)にて報告を行った。また、岩城は、8th International Burma Studies Conference(於北イリノイ大学)にて、やはり今年度の研究成果の一端を発表している。さらにこうした研究活動によって獲得された知見を総合するために年度末にかけて集中的に総括研究会を行った。これら研究活動によって得られた見通しは以下のようなものである。近世宋期は基本的に「海禁」の時代であったにもかかわらず、書籍の売買などを媒介しつつ情報は活発に流通していた。近代移行期に入り、「国境」によって保証された文化的同一性への欲求が急速に生成されるとともに、かって東北アジアに共有されていた秩序意識や知の体系は、克服されるべき「土着」として排除されていったのかもしれない。すなわち、基層社会における「土着」の価値体系こそ、むしろ北東アジアに共有されていた知的体系=普遍であり、これを個別的な国民国家の文化が切断・抑圧していった過程を予想できるのではないか、というのが現在の仮説的な見通しである。
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