研究課題/領域番号 |
20320092
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
山田 賢 千葉大学, 文学部, 教授 (90230482)
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研究分担者 |
久留島 浩 国立歴史民俗博物館, 研究部・歴史研究系, 教授 (30161772)
岩城 高広 千葉大学, 文学部, 准教授 (90312925)
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キーワード | 北東アジア / 国民国家 / 近世化 / 秩序意識 / 比較史 / ナショナリズム / 近代化 |
研究概要 |
本研究の主要な目的は、中国大陸・朝鮮半島・日本列島を包摂する北東アジア諸地域を中心的な対象に据えつつ、近代移行期においてそれぞれの社会のうちに胚胎された多様な秩序構想と、そのせめぎ合いの果てに「国民国家」とナショナリズムが生成されていく過程を、比較史的に検討することにあった。すなわち、本研究は、「国民国家」とナショナリズムという近代の枠組みを、単に外在的な所与と考えるのではなく、近代移行期の基層社会の内側から育まれた秩序構想を汲み上げつつ成立した「生成」の観点から捉えることを方法的な特長とする。 かかる方法的視点に基づき、2011年度にはとくに、東アジア「近世化」の比較史について検討を深め、共著書1冊、口頭発表1件(2012年度に論文として発表予定)を公表することができた。それら成果の概要は以下の如くである。 東アジア各地の社会は、16世紀の動揺を受けて、それぞれ安定したシステムの再構築へ向かい、それぞれの伝統社会を形成することになる。かかる伝統社会の内面では、それぞれの社会システムと整合的な倫理、あるいは秩序意識が生成されることになるだろう。秩序意識は、完成された社会システムを媒介としつつ、次第に社会の隅々まで浸透していく。いわば東アジア各地域における近世の内実とは、こうして秩序意識が漸進的に共有されていく「近世化」の連続的な過程であったのだが、19世紀においてそれが頂点に達するとともに、その中から国民国家が胚胎されることになった。 すなわち、16世紀以降の東アジアにおける社会変容を、1)並行的な「近世化」の過程と捉えること、2)「近世化」の頂点とともに内側から「国民国家」が胚胎されること、を明らかにしたのだが、かかる論点は東アジアの国民国家について検討する上で重要な意義を持つ。
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