(1)研究目的:本研究の目的は、中国大陸・朝鮮半島・日本列島を包摂する北東アジア諸地域を中心的な対象に据えつつ、近代移行期においてそれぞれの社会の内に胚胎された多様な秩序構想と、そのせめぎ合いの果てに「国民国家」とナショナリズムが生成されていく過程を比較史的に検討することにある。すなわち、本研究が目指すところは、「国民国家」とナショナリズムという近代の枠組みを、単に外在的な所与と考えるのではなく、近代移行期の基層社会の内側から育まれた秩序構想を汲み上げつつ成立した「生成」の観点から捉えようとする点にある。 (2)研究方法:本研究は次に示す方法により所期の目的を実現する。第1 は、中国・朝鮮・日本における近代移行期の地域社会に出現した多様な秩序構想を実証的に考察し、そのような地域レベルの秩序構想と、国家レベルの秩序構想とを架橋することである。第2は、それぞれの地域に密着した実証研究を進めつつ、北東アジア近代移行期における「国民国家」の生成過程を世界史的な観点から記述するための仮説を提示することである。以上の作業を通して、各国史の枠組を揺さぶり、北東アジア各地域の歴史を、「世界史」的な記述へと開いていくことも本研究の目指すところである。
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