研究概要 |
本研究は近世社会の知識人が持つ北方認識・北方観がどのように形成されたか,またそれが一般の生活者にどのような影響を与えていったか,さらに近現代の民俗事象のなかで,それがなおどのように息づいているのかを,北方認識・北方観が生活者に取っても重要な意味を持っていた北東北をフィールドとして,異分野の研究者の共同研究により解明することを試みる。これらの地は,18世紀には対外関係の緊張から,本来予想されなかった「外圧」に早期に直面し,政治体制の枠組みのあり方のみならず,為政者から民衆生活に至るまで強く,他者としての異国とその文化を意識せざるを得なかった。とくに,近世日本社会における北方認識・北方観の形成には,同時代の中国であり,東北アジアまで版図とした清朝からの情報が重要な役割を果たしていたことは言を待たない。この清朝からの情報は主として,長崎に輸入される漢籍を通して得たものである。したがって本研究課題は,清朝史,清代東北アジア史,及び漢籍に関する専門知識が必要であり,本研究は基盤研究ながらグローバルな総合性を特徴に進められる。
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