室町時代の古記録を室町文化の基層を解明するための研究資源として活用するために、以下のような研究を行った。 1.国立歴史民俗博物館、国立公文書館、宮内庁書陵部、下郷共済会所蔵「兼宣公記」、および国立歴史民俗博物館所蔵「広橋家旧蔵記録文書典籍類」に含まれる「兼宣公記」別記について、前年度までに作成した全文翻刻をもとに登場人物の同定、記事内容の研究を行い、応永30年・31年分を『史料纂集兼宣公記第二』として2012年度に刊行するために原稿を完成させた。 2.尊経閣文庫、史料編纂所所蔵「碧山日録」の校合を行うとともに、登場する人物の同定、記事内容の研究を進め、『大日本古記録 碧山日録一』として2012年度に刊行するために原稿を完成させた。 3.国立歴史民俗博物館所蔵「綱光公記」寛正3年記の解読と研究を進め、『東京大学史料編纂所研究紀要』に掲載・公開した。 4.宮内庁書陵部所蔵「宗賢卿記」一~三の解読、登場人物についての研究を進め、研究成果報告書に全文翻刻を掲載した。また人名索引を作成し、併せて掲載した。 5.国立歴史民俗博物館所蔵「中原師胤日記」の原本による校正を行い、全文翻刻を『国立歴史民俗博物館研究報告』に掲載するために原稿を作成した。また同記に登場する人物についての研究、同記と国立国会図書館所蔵「師郷記」の関係についての研究を行い、研究成果報告書に掲載した。 6.史料編纂所所蔵「高倉永豊卿記」の解読を行い、全文翻刻を発表する準備を進めた。 7.研究成果報告書を作成し、室町時代の古記録の記主たちをめぐる人物関係や知識継承に関して考察した論文を掲載した。
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