研究概要 |
本研究では、1,民衆にとって天皇・朝廷とはどのような存在であったか、2,民衆は天皇の権威をいかなる形で利用することによって、地域社会の秩序を構築したか、という二つの研究課題について、中世・近世を通じて天皇家との結びつきが強かった丹波国山国地域をフィールドにとり、由緒書、官途成り、公事、名主役、山国隊という五つのテーマに分けて検討した上で、その成果を総合し、一定の結論を導き出すことをめざす。 本研究の柱としては、現地調査の作業と、その成果にもとづく考察作業とがあげられるが、本年度は後者にウエイトを置きつつも、やや遅れ気味の前者も適宜実施した。具体的には、以下の作業を行った。 1. 山国地域の補充調査…夏と秋の2回、現地に赴き、古文書調査と民俗調査を実施した。 2. 文書目録の作成…高室家文書、護国神社文書、広瀬家文書を中心に、文書目録の作成作業を進めた。 3. 関連史料のリストアップとデータベース化…文書目録をもとに、本研究に関わる史料のリストアップとデータベース化の作業を行った。 4. 関連史料の読解…リストアップした史料の読解と内容把握の作業を進めた。 5. 論点の考察とまとめ…五つのテーマごとに作業班を作り、関連史料や関連先行研究の成果をも踏まえて、論点をめぐる考察を深めた。そのための研究会を、年間3回実施した。 6. 著書の執筆…研究テーマに関わる成果として、坂田聡(研究代表者)が『中世後期・近世前期の家と村社会』の執筆を、吉岡拓(研究協力者)が『19世紀民衆の歴史意識・由緒と天皇』の執筆を進めた。
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