研究課題/領域番号 |
20320109
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宮宅 潔 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (80333219)
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研究分担者 |
佐藤 達郎 関西学院大学, 文学部, 教授 (30340623)
佐川 英治 東京大学, 文学研究科, 准教授 (00343286)
丸橋 充拓 島根大学, 法学部, 准教授 (10325029)
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キーワード | 中国古代 / 軍事制度 / 出土資料 / 官制 / 法制 |
研究概要 |
本研究は(1)新出史料に見える軍制関係記事の整理と分析(2)秦漢~階唐時代における軍事制度の総合的検討、という二つの柱から成る。 本年度、前者に関しては抽出した資料の取捨選択、および分類に注力した。現在のところ、年代の分かる記事を主に選択し、それらを分類したうえで、解説をつけることを進めている。 後者の作業については、昨年度の国際シンポジウムでの成果を踏まえつつ、最終的な成果報告書の作成に向けて、その内容に関する発表.議論を行った。具体的には、宮宅と佐藤が研究発表を行い、それをめぐって国内メンバーで討議した。以下に発表の内容とそこで得られた成果を紹介する。 宮宅発表「秦代兵制の諸問題」は、従来漢代と一括りにして論じられることが多かった秦代の兵制について、それを漢とは別個のものして、戦国秦の具体的な施策や戦況をふまえて検討すべきことを提唱し、現今のところ得られている見通しについて述べた。秦の遠征軍の中には、一般の徴集兵のほか、半ば職業的な兵士たちも少なからず含まれており、かついずれの方面に遠征してゆくのかに応じて、特定地域の兵員が集中的に動員された可能性のあること、長平の戦い(BC260)では秦が趙に大勝し、統一への足がかりが得られたものの、秦軍の損害も大きく、さらなる遠征および占領地維持のために、新たに兵制の改革が行われたと思しいことなどが指摘された。同時に発表のなかでは、当時の戦役の規模や経緯を知ろうとしても、史書にはそれらに関する正確かつ詳細な記録が殆どないことが問題とされ、こうした資料的限界の下で、いかにして戦役史にアプローチすべきかが議論された。 佐藤発表「漢代における儀礼と軍事」は儀仗兵に焦点を据え、その機能と意義について論ずる。儀仗兵に関する従来の研究は、宮殿の警護や首都の防衛力といった側面から、実兵力としての儀仗兵の役割に注目する傾向にあったが、佐藤はそれが儀礼において果たした役割や、宗教的・政治的機能にも着目する。儀仗兵には農民から徴募された兵士も多く、それらが服役期間を終えて帰郷する際には、皇帝により盛大な宴会が設けられており、その点に君臣関係を確認する手続きとしての機能が認められること、また異民族から構成される部隊も儀仗兵のなかには少なからず存在しており、異民族の服従を儀礼の場において象徴的に表出する機能もあったこと、などが指摘された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
報告書の作成に向けて、各メンバーは順調に研究を進めており、軍事と儀礼の深い関わりや、軍事編成や軍功報償のあり方が、社会構造とその変遷と対応していることなどについて、共通認識も深まっている。昨年度の国際シンポジウムも成功裏に終了し、海外研究者との協働も円滑に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
最終的な成果にむけて、引き続き作業を進めていく。次年度は報告書の作成のため、共同研究者間の連絡をより密にし、討議を重ねる。兵制関係資料集については、大部になるため、紙媒体での印刷ではなく、web上に公開するなどの方策を検討する。
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